ハローワークの民営化について
現在(2006年現在)、ハローワーク関連分野では社会保険庁関連業務などと並び、市場化テストが行われています。
また、自民党総裁選の際、安倍晋三総理が「国の地方出先機関を見直す」とテレビ番組で発言しており、ハローワークが近い将来に民営化されるのではないかとの見方も存在します。
ハローワークは民営化すべき国の機関の第一候補とも言われており、ハローワークの「株式会社化」、「独立行政法人化」、「公設民営化」(ハローワークは国の機関であるが、実際の運営は民間企業(団体)に委託するということ)、ハローワーク職員が「公務員」である必要があるのかなど種々が議論されています。
「ハローワーク民営化論」はその論拠として、ハローワークは国の機関ゆえ受動的であり非効率である、という点をあげています。
もちろん、こういった傾向はハローワークのみならず、国の機関が持つ一般的な兆候としてあげられるものではありますが。
この論拠は、雇用の分野において国の介入を欲しないという求人事業主の意向によるものが大きいと思われます。
加えて、新聞の広告や無料情報誌を通じて就職する者が多いので、国が行うところの就職あっせんは需要がないのではといったことも言われています。
また、ハローワークの窓口を担当している者の多くは非常勤職員たる職業相談員であり、実質的には上述の「公設民営化」されているに近い実情ではないかと、首相の諮問機関である規制改革・民間開放推進会議は主張しています。
ハローワーク民営化における問題点
仮に、ハローワークが民営化されれば、「民間職業紹介機関を指導、監督することにより間接的な形で雇用対策を行うとしても、国民個々人の就業機会の確保という問題については国は関知しない」ということとなります。
これは、すなわち「仕事がない」と訴える者がいれば、「就職情報誌を見なさい」とか「派遣会社に登録しなさい」というアドバイスがなされるということを意味します。
国が直接個々人の就職の面倒まで見なければならないか否かについては議論の余地はありますが、「勤労の権利」を規定した憲法上の要請や、「国が無料の職業紹介をしなければならない」というILO条約遵守の問題、及び、国の許可を受け営業をしている民間職業紹介会社を利用して就職する者は「高度な職業スキル」を持っている者が中心であり、いわゆるブルーワーカーに対する民間サービスが手薄である現状(この層への紹介行為は概して民間職業紹介会社は利益を生みにくい)を考えると、公的職業紹介機関を完全に民営化することについてはまだまだ議論の余地があると思われます。